WEB銭の読書やグラベルロードのメモなど

マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

ノモレ

著者:国分拓
発行元:新潮社

 

目次

序 生き残った者たちが言い遺した話
第一部 救世主の山へ
一、ロメウ、川を上る――二〇一五年七月
二、マシュコ・ピーロ
三、基地での一日が始まる――二〇一五年七月
四、細長い筒銃、樹液の出る木ゴム、黄色い実バナナ
五、出現――二〇一五年七月
六、救世主の山モンテ・サルバード――二〇一三年乾季
七、交流、終焉、決意――二〇一三年雨季〜二〇一四年雨季
第二部 川を渡り来る者
一、音、川の向こう、近い日の話
二、ロメウ、家族との接触を続ける――二〇一五年八月
三、こちら側とむこう側――二〇一五年九月
四、不穏な前兆、隠された意図――二〇一五年十月
五、ロメウ、奔走する――二〇一五年十月
六、色、黒服の男、最初の一人
七、新たなプロトコル政府指針――二〇一五年十一月
八、対岸の友――二〇一五年十二月
九、隔ての川――二〇一五年十二月
十、遠い声
そして、流木は大河を彷徨さまよう
あとがき
九、隔ての川――二〇一五年十二月
十、遠い声
そして、流木は大河を彷徨さまよう
あとがき


感想

著者はNHKのディレクター。手がけたのは「ファベーラの十字架」や「あの日から1年 南相馬 原発最前線の街で生きる」、「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」、「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」など。

 

本書のタイトルであるノモレとは友人や、友という意味。アマゾンの原住民、イネ族の言葉である。

 

アマゾンの奥地にはブラジルや、ペルーの国籍を持っているが、先住民の血をひく、もしくは先住民の住民がいる。彼らの中には流暢にスペイン語ポルトガル語を話すものもいれば、片言のスペイン語ポルトガル語しか話せないものもいる。

 

そして、先住民の中には、同じ部族であっても文明社会に一切接触せずに生活を続けている人々もいる。彼らはイゾラドと呼ばれている。

 

そうなのである。著者の国分さんは、アマゾン先住民の取材を長年続けているプロなのである。

 

で、イゾラド。彼らは保護され、よほどのことがない限り、接触が禁じられている。それはなぜか?スペインや、ポルトガルの植民地支配の流れではないが、文明社会の人間だけが有しているウイルスに感染すると、すぐに死んでしまう恐れがあるからだ。

 

しかし、そんな彼らと接触してしまう。最初は文明側が彼らから攻撃を受ける。次は文明側が彼らを助ける。

 

接触の中心となり、本書の主人公と言えるのがイネ族の若者、ロメウである。彼はスペイン語も話せれば、イネ族の言葉も話せる。

 

法律で禁じられているイネ族の言葉が通じるイゾラドと接触しているうちに、1つの疑問が浮かび上がってくる。「彼らは文明社会だけが持っている病気に感染しない」ということを。

 

アマゾンの先住民には「百年ほど前、白人の主人が、管理する農園から逃げ出した仲間がいる。奴隷として働かされていた仲間たちと逃げ出したことがある。しかし、全員が故郷に辿り着いたわけではなかった」というような言い伝えが残っていた。白人が切り開いたゴム農園で、奴隷としてゴムの収穫を行っていたご先祖様がいた。そのご先祖様は謀反をお越し、白人を殺し、故郷へ逃げようとした。

 

でも、逃げ切れない仲間がいた。

ノモレ。

ロメウが先住民と触れ合ったときに発した言葉。

仲間。

彼らはイゾラドなどではなく、百年ほど前に生き別れた仲間たちの子孫だったのである。

 

白人からの支配から逃げるだめ、ジャングルの中で静かに生活を続けてきた人々。文明に未接触だったわけでなく、百年ほど前には文明の中で生活していた。奴隷として。

 

生き別れた部族の歴史が21世紀に、また一緒になった。

 

人々のルーツを知る話としても素晴らしいし、アマゾン開拓の歴史、それはプラスの面もマイナスの面も、を知るのにも素晴らしいし本ですな。

 

さすが、著者は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しているだけのことはありますな。

 

そして、このような奇跡というか、このような歴史はアマゾン以外の土地でもあるのでしょうな。それを考えると心が少し重くなるね。

 

 

ノモレ

ノモレ