目次
目撃者の記録
バシー海峡
実数と員数
暴力と秩序
自己の絶対化と反日感情
厭戦と対立
「芸」の絶対化と量
反省
生物としての人間
思想的不徹底
感想
すげぇ。
この本すげぇ。
ここにかかれっている内容は日本軍だけでなく、日本的組織にぴったりと当てはまる。
国家でも、行政でも、会社でも、家族でも。
一番最初に敗因二十一か条というものがありまして、それを解説するように話は進んでいきます。
で、そんな二十一箇条は何かというと
- 精兵主義の軍隊に精兵がいなかった事。しかるに作戦その他で兵に要求されることは、総じて精兵でなければできない仕事ばかりだった。武器も与えずに、米国は物量に物を言わせ、未訓練兵でもできる作戦をやってきた。
- 物量、物質、資源、総じて米国に比べ問題にならなかった。
- 日本の不合理性、米国の合理性
- 将兵の素質の低下(精兵は満州、支那事変と初戦で大部分は死んでしまった)
- 精神的に弱かった(一枚看板の大和魂も戦い末期になるとさっぱり威力なし)
- 日本の学問は実用化せず、米国の学問は実用化する
- 基礎科学の研究をしなかったこと
- 電波兵器の劣等(物理学貧弱)
- 克己心の欠如
- 編成力なき事
- 個人問して修養をしていない事
- 陸海軍の不協力
- 一人よがりで同情心がないこと
- 兵器の劣悪を自覚し、負け癖がついたこと
- バーシ海峡の損害と戦意喪失
- 思想的に徹底したものがなかったこと
- 国民が戦いに厭きてきた
- 日本文化の確立なき為
- 日本は人名を粗街にした
- 日本文化に普遍性なき為
- 指導者に生物学的常識がなかったこと
この21か条だけでも素晴らしいのですが、本書にはそれ以外の名言が満載です。
まず66ページ
それはまさしく機械的な拡大再生産的な繰り返しであり、この際、ひるかえって自らの意図を再確認し、新しい方法論を探求し、それに基づく組織を新たに作りなおそうとはしない。むしろ逆になり、そういう弱気は許されず、そういうことを言う者は敗北主義者ということになる。
とか
67ページ
これらの言葉の中にはあらゆる方法を探求し、可能な方法論を試みたいという意味はない。ただ、ある一方法を一方向に、極限まで繰り返し、その繰り返しのための損害の量と、その損害を克服するために投じた量と、それを投ずるために払った犠牲に事故満足し、それで力を出し切ったとして、自己を正当化しているということだけであろう。
とか
76ページにある
激烈な軍国主義が軍事力とされてしまうから本当の軍事力はなく、精兵主義が精兵とされる故に精兵がいないという状態を招聘し、首脳部は自らの状態すら把握できなくなってしまうのである。
とか
81ページ
数があるぞといえば質も内容も問わない。これが極端まで進めば、数があるぞという言葉があれば、そしてその言葉を権威付けて反論を封ずれば、それで良いということになる。
とか
97ページにある
そして、その第一歩はなんであったのだろう。ないものをないと言わずに、ないものをあると言うか、言われないかをその人間の資格としたことであった。
とか
145ページにある
そしてこういう見方をする人たちの共通点は「自分は別だ」「自分はそういった鬼畜と同じ人間ではない」という前提、すなわち「相手を自分と同じ人間とは認めない」という立場で発しており、その立場で相手の非を指摘することで自己を絶対化し、正当化している。
とか
148ページにある
言うまでもなく普遍性はまず相対化を前提とする。それは相手が自分と違う文化的基準で生きていることをありのままに当然のこととして知ることから始まる。もしそれが出来ないなら、自分だけが人間で、他はすべて人間ではないことになってしまう。そして、それは一人よがりで同情心が無いことであり、その人間が共感や同情らしき感情を示す場合は、なんだかの絶対者に拝跪して、それと自己を同定して自己絶対化を行う場合だけである。だからこれは、本質的な共感でもなければ、同情でもない。
とか
181ページ
われわれは、非常に長い間、この一定制約下に「術」ないしは「芸」を争って優劣を決めるという世界に生きてきた。この伝統はいまの受験戦争にもそのまま現れており、チョットやそっとでは消えそうにない。
とか
182ページ
そしてこの事実の背後には徳川時代以来の、外的制約を固定して、それが絶対に動かないという根拠なき信念のもとに、その固定の中で芸を磨き、その芸が極限を乗り越えて万能でありうるという考え方があった。
とか
207ページ
そしてここにあるのが前提が違えば、前提を絶対視した発想・計画・訓練はすべて無駄になることがどうしても認識できない太平洋戦争中の日本軍と同じ状態なのである。
とか。
この本、スゴイ。
凄まじい。
日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)
- 作者: 山本七平
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2004/03/10
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