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古書泥棒という職業の男たち―20世紀最大の稀覯本盗難事件

著者:トラヴィス・マクデード
役者:矢沢聖子
発売元:原書房

 

目次

プロローグ さまよう星
1章 大恐慌時代の稀書事情
2章 蓄積した知恵
3章 盗まれたポー
4章 学識と研究
5章 ボストンの状況
6章 愛書家の資格のある人間
7章 ニューヨーク州の裁判
8章 稀覯本の終わり

 

感想

IT技術が発達することで、なくなる職業というのが話題になっていましたが、職業じゃなくともなくなるものがあります。それは、紙の本。いや、クルマが発達しても馬が残ったように、テレビが発達しても映画が残ったように、この世から紙の本が一切なくなるということはないでしょうが、立ち位置は今と大きく異なってくることまちがいなしです。

 

20世紀初頭まで、紙の本は高級品でした。そして、初版本や、希少本と呼ばれる種類の本は超高級品。古本市場でとんでもない価格で取引されていたわけです。

 

価値ある希少本が大量にある場所はどこか?それは、図書館。

 

窃盗団は図書館からそんな本を盗み出し、普通の蔵書であると偽装して、市中の古書店に売却する。

 

窃盗団は図書館警備員に見つからないように、本を盗み出す。図書館警備員は、数多い利用者の中から、窃盗団を見つけ出す。図書館の蔵書には「図書館の本です」という印がつけられているので、その印を職人たちが取り除く。偽装職人。いわゆるニンベン師って方々ですね。ニンベン師の更に上行く存在なのが、古書店の主人。何万冊という本を実際に手に取り仕入れているので、ちゃちな偽装などかんたんに見破ってしまう。

 

誰も殺されることもなければ、スパイが出てきてドン発することもないですが、本をめぐって繰り広げられる駆け引きとやり取りは、グイグイ引きこまれますな。

 

しかし、こんなやり取りも20世紀初頭まで。徐々に本自体が一般品となり、希少本の価値も下がり続けるわけです。そして、気がつけば電子書籍の登場。

 

この本に出てくる世界は馬具職人がその腕を競いあうような時代のお話なのですな。

 

 

古書泥棒という職業の男たち: 20世紀最大の稀覯本盗難事件

古書泥棒という職業の男たち: 20世紀最大の稀覯本盗難事件