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1985年のクラッシュ・ギャルズ

著者:柳澤健
発売元:文藝春秋

 

1985年のクラッシュ・ギャルズまとめ

プロレスラーとは強いだけじゃダメなんだよ。観客を魅了できる力を持っていなきゃダメなんだよ。ただ、役者じゃないから、観客を魅了する演技力を持っているだけじゃダメなんだよ。強さも必要なんだよ。そこが格闘家との最大の違いだ。そして、もう1つ、格闘家との大きな違いがある。プロレスラーは負けることでファンを魅了し、惹きつけ、沸かせることができるのだ。これ、格闘家じゃ、できないこと。プロレスは強さだけでなく、レスラーとレスラーが作り出す物語を見せるんだよね。だからこそ実現できるすごいこと。そんなプロレスのすごさをクラッシュギャルズという伝説的なコンビを通して教えてくれる1冊。そして、あまりにも突出した才能に頼っていると、市場はなくなってしまうと言う事実を教えてくれる1冊。

 

1985年のクラッシュ・ギャルズを読んだ理由

プロレスが好きなので

 

1985年のクラッシュ・ギャルズで仕事に活かせるポイント

どれだけお客を魅了し、惹きつけることができるかですね

 

1985年のクラッシュ・ギャルズの目次

観客席の少女

置き去りにされ

光り輝くエリート

赤い水着

青い水着

親衛隊

引退

現実と向きあう季節

新団体

冬の時代に

夢見る頃を過ぎても

そして誰もいなくなった

クラッシュ再び

 

1985年のクラッシュ・ギャルズの感想

空前絶後の人気を誇ったプロレスラーと言えば、力道山、G馬場にA猪木、タイガーマスクに、そしてクラッシュギャルズ。プロレス会場だけではなく、テレビ番組も席巻し、社会現象にまでなったプロレスラーって、実はそんなにいない。ちょっと後ろめたい世界に存在していたのがプロレスであったわけで。そんなプロレスをお茶の間のものに引き上げたのがタイガーマスクだとすれば、プロレスラーをアイドルと同等以上の地位にまで引き上げたのがクラッシュギャルズであると、私は思っております。

そんなクラッシュギャルズに関する本が本書。

なのだけれど、クラッシュだけの話で終わらないのが、本書のすごいところ。

日本女子プロレスという団体に生まれたクラッシュギャルズという天才コンビ。とはいえ、結成当初にプロレスの天才だったのは長与千種だけで、ライオネス飛鳥は、そうではなかった。飛鳥はプロレスの天才ではなく、格闘技の天才であり、フィジカルエリートだった。

でもね、それだけだと、客を呼べないし、観客を沸かすことができない。

強さよりも、客の入りで、どれだけ客を集めて、どれだけ客を沸かせたのか?でジャッジされるプロレスの世界にあって、強いだけでは地位を築くことができない。

落ちこぼれだった長与とダンプがプロレスを身につけ、地位を獲得していくなかで、相対的にポジションが下がっていく元幹部候補生だったライオネス飛鳥長与千種ライオネス飛鳥という80年代を沸かせた女子プロレスラーの半生を通して見えてくるのはプロレスの仕組みだけでなく、「仕事をする」意味。独りよがりで仕事をしても、良い結果を得ることはできない。それは一般的な仕事でも同じなのだ。

どうすればお客を魅了することができるのか?そのためにどれだけ努力が必要なのか?クラッシュギャルズ極悪同盟ジャガー横田デビル雅美北斗晶にそんなことを教えてもらうとは、全く思いませんでした。

 

それ故、この言葉がすごく刺さるのです。

 

プロレスは言葉だ。口から出るものばかりではない。相手にフォールされた時に、必死で跳ね返せば、観客には選手のやる気が伝わる。全ての動く言葉として観客に伝えること。それがプロレスラーの仕事なのだ。 

 

そして、この一文。

 

プロレスラーが人の心を動かすためには、一種の怪物に変貌しなければならないのだ。

 

 

人工的にでも、この怪物を生み出すことが出来なければ、女子プロは沈んだままなんだろうと思った。

 

いや、それじゃつまらなさすぎるよ。

 

 

1985年のクラッシュ・ギャルズ (文春文庫)
 

タイトル:1985年のクラッシュ・ギャルズ

著者:柳澤健

発行元:文藝春秋