著者:朝日新聞国際報道部:駒木明義、吉田美智子、梅原季哉
発売元:朝日新聞出版社
目次
第1部 KGBの影
(ドレスデンの夜;国家崩壊のトラウマ;KGBとプーチン;人たらし)
第2部 権力の階段
(初めての訪日;改革派市長の腹心;権力の階段;インタビュー)
第3部 孤高の「皇帝」
(コソボとクリミアをつなぐ線;G8への愛憎;権力の独占;欧州が見たプーチン;「皇帝」の孤独;プーチンはどこに向かう)
第4部 三期目のプーチンと日本
(「引き分け」の舞台裏;プーチン訪日への模索)
感想
現役の政治家の中で、わたしが尊敬してやまない、ウラジミール・プーチンの素顔に迫った本。そりゃ、リベラルな政治家じゃないかもしれないし、気に食わない相手は殺してしまう元スパイの大統領かもしれないですが、一時はボロボロになったロシアを立て直し、そして繁栄に導いたのだから、とんでもなく素晴らしい政治家だと思うよ。
で、そんなプーチン大統領、昔はKGBのスパイで東ドイツにいたわけで。で、そのころは今と違って(いや、今もそうかもしれないけれど)、かなりリベラルな思想の持ち主だったということが、わかるのよね。
共産党の一党支配をなんとかしなければならない。
その想いがあったからこそ、エリツィンから引き継いだ大統領職を、務め上げることができたのだと。
共産党の一党支配をやめ、社会主義をやめ、外国資本を呼び込み、民主的な選挙を行い、資本主義となり、法の支配が正しく行われる国に生まれ変わらせた。
そう、ロシアをね。
でも、それをアメリカを始め西側諸国は認めてくれなかった。
いまだに、ロシアを敵対視する。
そりゃ、西側諸国をきらいになりますわな。
そんな「オレ結構頑張ったのに、お前たち認めてくれないんだな」という、プーチンの挫折感が、ここかしこに散りばめられているのにびっくりします。
そんな挫折感の最高潮が、224ページ、2012年のG8サミット終了後のコメントに現れておりますわ。
重要なのは、そこで様々な意見が語られることだ。何か一つの意見が支配してしまったり、その一つの意見に基づいて決定がなされてしまったりしてはいけない。それではかつてのドイツ社会民主党やソ連共産党中央委員会の決定と同じことになってしまう。重要なのは、それが民主的な場であることだ。全員がお互いの言うことに耳を傾け、屈辱や偏見なしに議論し、共通のアプローチを作り出すことだ。
もしかして、プーチンのほうが、西側の政治家よりも圧倒的に自由を愛しているのかもしれない。
そう思えてきましたな。