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なぜ日本企業は真のグローバル化ができないのか―日本版GOM構築の教科書

著者:野村総合研究所・田口芳昭
発売元:東洋経済新報社

 

目次

第1章 日本企業のグローバル化の何が問題なのか
「グローバルマネジメント1.0」段階のバージョンアップに残された最後の5年間
グローバルマネジメント1.0の限界
日本企業はグローバル化しても経営効率(ROA)は上がらない
日本企業は、海外企業と比べROAでは大きく劣る
コーポレートガバナンス・コード」「スチュワードシップ・コード」が求めるインパク
グローバル人材マネジメントを難しくする“日本的な”Mission/Vision/Value(MVV)
意思決定機関の構成人材についての海外グローバル企業との違い
グローバル本社の基盤としてのグローバルITシステムのデッドロック
脱グローバルマネジメント1.0へ向けた乗り越えるべき壁

第2章 海外グローバル企業の経営効率化の仕組み(Global Operating Model:GOM)
グローバル本社はプラットフォーム(GOM)を提供する主体である
グローバルオペレーティング・モデル:GOMのケース
シーメンス」のグローバルオペレーティング・モデル:GOM
「BASF」のグローバルオペレーティング・モデル:GOM
GOM構築の要点
日本企業はドイツ企業から何を学ぶべきか

第3章 日本企業によるGOM構築はなぜ難しいのか
日本人、日本企業にとってGOMが腹落ちしない理由
GOM構築における問題・課題、トレードオフ問題
日本企業のGOM構築の試み
三つのパターンそれぞれのPros & Cons(よい点&問題点)
今後の日本企業のGOM構築への示唆

第4章 強い日本型グローバル本社のつくり方:GOM構築の8カ条
日本版GOM構築の8カ条
日本企業のGOM構築、四つ目のパターン ~日立製作所の挑戦~
日本型GOMの構築に向けた「変革大工程」

 

感想

野村総研の部長さんが著者。
日々の業務で「なんで、日本企業の海外展開はうまくいかないのかしら?」ということを日々行っているらしく、その知見がギュッギュと詰まっております。

 

ちなみにGOMとは「Global Operating Model」

 

日本企業の海外展開がうまくいかないのは、日本企業の特異性によることが多い・・・なんてよく語られておりますが、その特異性が完結にまとめられております。

それをまとめるとこんな感じ。

 

【海外グローバル企業の経営コンテクスト】←→【日本企業の経営コンテクスト】
80/20ルール ←→ 100点満点、品質至上主義
シンプルに、絞って ←→ 全体最適、バランス重視
責任、権限 ←→ 横串調整
プレゼン、表現する能力 ←→ 文章作成能力
経済合理性、一気呵成 ←→ 実行しやすさ、時間をかけて
本気で(Diversity, Work life baalnce) ←→ ポーズだけ
スペシャリスト ←→ ゼネラリスト
多国籍 ←→ 日本人
形式知、IT重視 ←→ 暗黙知、人重視

 

ってか、日本企業とそれ以外ってくくり、でかすぎないか?韓国企業とか、中国企業とか、フランス企業とか、ドイツ企業でも特異点があるんじゃないのかしら?なんて思ったりするのですが、それは一旦おいておいて。

 

じゃ、なんでそんな日本企業になってしまったのかというと、その秘密が16ページに簡潔にまとめられております。

 

製造業を中心とした日本企業の多くはすでにグローバル化が進んでいる。売上の半分以上を海外市場で上げている企業も少なくない。そうしたグローバル化が進展した企業に、「御社のグローバル経営のスタイルは?」と聞くと、多くの場合、「連邦経営」というキーワードが返ってくる。
各企業によって、独自の解釈は存在するが、この言葉は、多くの場合、地域/事業ごとに拠点を築き、それぞれが「自律的に」、事業規模を拡大することを意味する。これは、海外展開が、地域/事業ごとに、「営業所開設」→「支社へ格上げ」→「現地法人化(≒連邦国化)」という流れになっているからだ。

 

で、なんで海外展開が上手に行かないのか?ナニを持ってしてうまくいかないのか?という定義もちゃんとされているのが素敵。投資対効果が悪いという一点において、もうだめだめだと。なんで、ダメなのかというと、その理由も23ページに完結にまとめられている。

 

日本企業は、グローバル化が進む(海外売上高比率が上がる)と、ROAが上昇する企業と横ばい、もしくは美玄する企業とに分かれる。詳細を見てみると、ROAが上昇している企業には特色がある。製薬業、自動車製造業など、単一事業でグローバルに展開している企業群である。ROAが上昇していないのは、複数事業✕複数地域でグローバル展開している企業である。あえて辛辣な解釈をすれば、日本企業は、単一事業でシンプルなグローバル化を行う場合、規模のメリットを享受することが可能だが、複数事業で複雑なグローバル化を推進する場合は、複雑性の増大に対し無策で規模のメリットを享受できないといえる。

 

日本市場より大きな海外市場に打って出たはずなのに、その規模の大きさというメリットを享受することができないのね、と。

 

じゃあ、海外展開が上手な企業っていうのは具体的にどんな状態の企業なのかというと


【海外グローバル企業】 ←→ 【日本企業】
機能軸組織によるグローバル横串統制 ←→ 日本本社の域を出ず、事業・地域独自にグローバル化
共通の定義に基づく、共通のKPIによる高速PDCA ←→ 多くの日本人駐在員による暗黙知に基づく管理
グローバル共通のポリシー、ルール、標準業務プロセス ←→ 各事業・地域独自の業務により標準化が不十分
グローバルに共通解釈、人事評価と連動、共通の価値観構築 ←→ 日本本社内での展開、空気のような存在(暗黙知
仕組みによるアプローチ、機能軸による事業の統制(利益を伴う成長) ←→ 人依存によるアプローチ、事業・地域の独自展開重視(売上重視)

 

なんだとな。
日本企業と比較するとよくわかりますわな。そして「利益重視なのか、売上重視なのか」の差が大きいのですな。

で、本書のサブタイトルにもあるGOMな状態ってナニかといいますと

 

グローバルオペレーティングモデル(GOM)
★組織/ガバナンス・プラットフォーム
組織×機能✕地域の3次元で意思決定できる組織体制・マネジメント体制
★業務/IT・プラットフォーム
事業・地域に関係なく、業務推進が可能なKPI、ツール、プロセス、ITプラットフォーム群
★人材/ビジョン・プラットフォーム
キー人材は同じ価値観で仕事ができる(=グローバル人材プール)

なんだとな。


ここで「ん?」と思ってしまうのが「★人材/ビジョン・プラットフォーム キー人材は同じ価値観で仕事ができる(=グローバル人材プール)」ですわな。これは、日本企業が得意な擬似家族として洗脳し、強引に1つの価値観を植え付けることじゃないのですよね。それは56ページに書いてある。

 

そこでは、「ともに仕事を気持ちよくできるか」という価値観が重要になる。日本企業の海外人材問題では、評価と処遇に着持ちしがちだが、日本企業と、海外グローバル企業の違いは、評価と処遇よりも「価値観」の重要性にある。海外グローバル企業は海外人材をマネジメント人材の候補と考えており、特定機能の専門人材として採用しても、将来的にはその中から、マネジメント人材が育って欲しいと考えている。

 

気持よく働いてもらうと、擬似家族に洗脳するは違うからねぇ。

ちなみに
ビジネスの現場で、海外の人に自分の会社を説明する際、自社のMission(何を目的に)、Vision(どんな会社に)、Value(どんな価値観で)(=MMV)を聞かれることが多い
なんですとな(36ページ)

で、いろんな国のいろんな会社の事例が紹介されているのですが、LIXILだけは「ん?」な感じでしたな。


で、最後に、そんな海外展開がうまくいくためになる8条が本書には書いてあった。それは、これ。

 

日本版GOM構築の8カ条


第1条 事業・地域軸の壁を崩す
第2条 情報をグループ内で「公共財化」する
第3条 機能軸による統制力を強化する
第4条 「守るべきもの(固有の競争力の源泉)」を担保する仕組みを構築する
第5条 GOMを構築し、動かす人材層の厚みを確保する
第6条 グローバルに伝えられる「価値観、行動指針」を再構築する
第7条 事業✕地域✕機能の最適解を議論するマネジメントチームを構築する
第8条 長期に渡るGOM構築シナリオを保持する


ですとな。

 

 

タイトル:なぜ日本企業は真のグローバル化ができないのか 日本版GOM構築の教科書
著者:野村総合研究所・田口芳昭
発売元:東洋経済新報社
おすすめ度:☆☆☆(ですわな)