著者:今枝昌宏
発売元:東洋経済新報社
目次
はじめに
第Ⅰ部 ビジネスモデル総論
第Ⅱ部 ビジネスモデル各論① 事業の内部モジュール編
第1章 対象市場定義
第2章 顧客・案件の獲得
第3章 顧客の維持
第4章 サプライチェーン
第5章 資源の獲得
第Ⅲ部 ビジネスモデル各論② 事業全体を貫く仕組み、流れ編
第6章 好循環
第7章 ライフサイクル
第8章 財務モデル
第Ⅳ部 ビジネスモデル各論③ 事業間の仕組み編
第9章 アライアンス
第10章 コーポレート
第Ⅴ部 有効なビジネスモデルの構築方法
おわりに 普段から行うこと
感想
類似書というか入門書で『ビジネスモデルの教科書』というのがある。そちらはセブン-イレブンや、YKKなどを取り上げて、いろいろわかりやすくと言うか、基本的なことから教えてくれる、まさに「教科書」だったのですが、この上級編は違います。
「競争優位の仕組みを見抜く&構築する」とあるくらいです。よく知っている企業がたくさん出てきますが、それぞれの企業が「具体的にナなにをしている」という説明はほとんど出てきません。それは、知っていて当然という前提に立っています。その前提に立ち、そのビジネスモデルの骨格というか、仕組みを抽出し、ポイントをおしえてくれるのが、本書の立ち位置なのです。
■そもそもビジネスモデルとは■
ところで、ビジネスモデルとは何でしょうか? 『ストーリーとしての競争戦略』として流行っているすとーりーとなにが違うのでしょうか?
という点に対して、著者はこう述べております。
ストーリーとビジネスモデルとの違いがあるとすれば、ビジネスモデルとの違いがあるとすれば、ビジネスモデルが仕組み、つまり反復的に利用可能であり、定型化できる動きを観察対象とするのに対して、ストーリーは仕組みではない、業界依存的な、戦局の変化のコントロールのような最上位の、一回的・一方的な流れを含んでいるということです。
とな。
つまり、「型」に落としこむことができるのが、ビジネスモデルということなのでしょう。というのが、個人的な理解です。
「型」というくらいなので日本人にピッタリ当てはまりそうなのですが、そうは問屋が卸さない。技は盗むという文化というか、精神論がまかり通る国では、「型」を覚えるのも簡単には行かない。システマチックにマニアルで何とかするというのは苦手ですからね。
だから、日本の企業はダメになっていき、だから、日本の企業にはビジネスモデルが必要なんだとな。
■では,どうやってビジネスモデルを見ていくのか?■
コレが本書のコアのコアになるのですが、著者は様々紹介するビジネスモデルをモジュールに分解してビジネスモデルを見ていくのがいいのだとな。では、なぜ、紹介&説明してくれます。ビジネスモデルをモジュールに分けてい見ていくのが良いかというと、
各モジュールはそれぞれ目的を持って作られており、それは事業の成功や競争での勝利を分解した現実的な目的となっているから
なのだとな。
プリウスを真似ようとした時に、クルマまるごと「プリウスっぽいもの」を真似るのではなく、構成しているモジュール単位にプリウスを分解し、それぞれの単位でいろいろ調べていく、と。ハイブリッドシステムや、リチウムイオン電池の充電システムという単位に分解して、マネていきましょうということなのですな。
■目次■
で、本書の目次は下記のようになっている。 ビジネスモデル各論の箇所で、いろいろ具体的に、エッセンスを注意出して教えてくれるのが嬉しい。
例えば「対象市場の定義」の「取引周辺の関係者への顧客再定義」ではぐるなびと食べログを例にとって説明をしている。ぐるなびも、たべろぐも飲食店が顧客であるが、ぐるなびの場合は飲食店へのマーケティング支援で、食べログは飲食店からの広告収入でお金を稼いでいると、教えてくれている。同じ「対象市場の定義」における「製品を使用する環境の販売への再定義」ではドトールコーヒーとスターバックスを例に取っている。ドトールコーヒーの提供価値定義は200円で美味しいコーヒーであり、スターバックスの提供価値定義はThe Third Place。コレは知っている。コレを知っていれば、スタバの顧客満足度が、最近、目に見るように下がってきているのも理解できる。
で、重要な目次。
はじめに
第Ⅰ部 ビジネスモデル総論
第Ⅱ部 ビジネスモデル各論① 事業の内部モジュール編
第1章 対象市場定義
第2章 顧客・案件の獲得
第3章 顧客の維持
第4章 サプライチェーン
第5章 資源の獲得
第Ⅲ部 ビジネスモデル各論② 事業全体を貫く仕組み、流れ編
第6章 好循環
第7章 ライフサイクル
第8章 財務モデル
第Ⅳ部 ビジネスモデル各論③ 事業間の仕組み編
第9章 アライアンス
第10章 コーポレート
第Ⅴ部 有効なビジネスモデルの構築方法
おわりに 普段から行うこと
■で、使えそうなビジネスモデルのポイント■
で、本書の中で使えそうな箇所はここ。
サプライチェーンで競争優位性を生み出す箇所は3箇所。
●提供価値
-製品力以外に「早く手に入る」「カスタマイズできる」「便利だ」を提供
●顧客維持
-顧客のスイッチングコストを上げて、他社による異なったサプライチェーンを前提とした納入をブロックできる
●財務モデル
-コストの多くはサプライチェーンで発生しているので、コレを片側れば一気にコストは削減できる。
こういうポイントを打ち出して、行くのが必要ですと。
プロフェッショナルサービスファーム
ワタシの仕事のにかなり近い、プロフェッショナルサービスファームのビジネスモデルも出ていた。
プロフェッショナルビジネスファームの最大の売りは人材。ってか、人材しか無い。そして、あらゆる製品、サービスがコモディティ化する時代にあって唯一、コモディティ化しないのが人材だとな。
そりゃそうだ、と。
で、そんなプロフェッショナルサービスファームの概要とは。。。
●素人の要因を雇用し、プロとして育つための教育を施す傍ら、アップ・オア・アウトにより要因を選定。
●少数のトップタレントには高い給与を支給してリテンションを図るとともに要因の上昇モチベーションを維持する。初期給与を低く抑えてコストの低い労働力を確保できるようにするコスト構造を構築。
●社外に排出した要員を受注チャネルとして利用することも多い。
なんか、ドキドキしますなぁ。
でも、本書の中で一番重要そうなのが「筆者が推奨するビジネスモデルのフレームワーク」で、これは
事業菅の仕組み
-アライアンスコーポレート
事業内部モジュール
-顧客維持の仕組み
-資源獲得の仕組み
-顧客獲得の仕組み
-サプライチェーンの仕組み
対象至上主義
-ターゲット顧客
-提供価値
財務の仕組み
-コストモデル
-レベニューモデル
-全体財務モデル(利益モデル)
競争優位を生み出す仕組み
-ライフサイクル
-好循環
ですな。
あと、重要なモジュールを見つける4つの質問
1)顧客(セグメント)の購買判断は、何を基準になされるのか? 購買決定の思考プロセスはどのようなものか?
2)業界で最も不足する経営資源は何か?
3)業界における最大のコスト要因は何か?
4)最も規模の経済が聞くビジネス機能は何か?
この問に答えていくことで、重要なビジネスモデルのモジュールがわかるということですな。
目にした会社、気になる会社に関して、自分がその会社の関係者になったつもりになって、この質問に答えていく素振りを続けなきゃダメなんだな、きっと。
タイトル:ビジネスモデルの教科書 上級編
著者:今枝昌宏
発売元:東洋経済新報社
おすすめ度:☆☆☆☆☆(名著!)