WEB銭の読書やグラベルロードのメモなど

マンガ「グラゼニ」が大好きな、ウェブ系の何でも屋さんが綴る、仕事とか、読んだ本のこととか、日常とか、世の中に関する忘備録。

アテンション―「注目」で人を動かす7つの新戦略

著者:ベン・パー
訳者: 依田 卓巳、依田 光江、茂木 靖枝
日本語版解説:小林弘人
発売元:飛鳥新社

 

目次

はじめに これからは、「注目」を制す者が夢も市場も手に入れる
第1章 注目の三段階 注目には「即時」「短期」「長期」がある
第2章 自動トリガー 「色」や「シンボル」で人間の無意識に訴えかける
第3章 フレーミング・トリガー 「おなじみの感覚」を演出する
第4章 破壊トリガー 「驚き」「単純さ」「重要性」のセットで畳みかける
第5章 報酬トリガー 「相手がほしがっているもの」を可視化する
第6章 評判トリガー 肝心なのは「なにを言うか」より「だれが言うか」
第7章 ミステリー・トリガー 「謎」「不確実性」「サスペンス」を提供し続ける
第8章 承認トリガー 「認知」「評価」「共感」の三欲求を満たす
おわりに この本のもうひとつの目的

 

感想

 

この本、すごい本だ。
世の中、いろいろ立ち上げたものを、始めたものを「うまく成功させる方法」や「失敗させない方法」を紹介した本はたくさんある。

 

が、はじめの一歩を踏み出す方法、その情報を伝える方法にフォーカスを当てた本というのは、なかなかない。っていうか、今までなかったと思う。

 

なぜ、それが重要かというと、世の中、情報が溢れかえっているからだ。重要な人、伝えたい人に情報が伝わ…ればいいよね、と。伝われば、ジャッジしてもらえるけれど、それ以前の問題となっているわけで、それを解決するための方法が具体的に、7つのステップ(というか、7種類のトリガー)が書かれているのですわ。


世の中に情報が溢れかえっていることを、まず徹底的に教えてくれる。そして、その解消方法を教えてくれる。

 

この本の冒頭では、「もう、世の中、情報が溢れかえっていて大変なんすよ」ということを徹底的に教えてくれる。徹底的に教えてもらいすぎて、「お腹いっぱいです」って状態になってしまうのですが、それ以上に「あるあるある」と感じ、引きこまれてしまうのですよ。

 

たとえば、9ページ

南カリフォルニア大学の研究者によると、1986年の人は1日平均、新聞役40部に相当する情報にさらされていた。それが2006年には、4倍以上の174部相当になった。

 

こういう情報を散りばめて「大変すよね~」と注意喚起を誘ったら

10ページ

注目は希少であると同時に、維持しにくい。だから、注目が生じる仕組み、つまり人々が特に意図せず、何に、なぜ注意を払うかを理解することが大切になる。

となり、更に

14ページ15ページ

 

(エイドリアン)グレニアーのたとえは的を射ている。焚き火と同じように注目を継続させるには段階を踏まなければならないのだ。詳しく言うと三段階だ。
その一…点火。すなわち「即時の注目」を得ること。
その二…藁火。ここでは「短期の注目」の獲得を目指す。
その三…焚き火。注目のこの最後の段階では「長期の注目」の獲得を目指す。

 

と続いて、この本のキモである7つのトリガーの紹介に入っていくわけですよ。

 

1)自動トリガー…色やシンボルや音などの感覚的刺激を与え、無意識的な反応を引き起こして注目させる。
2)フレーミング・トリガー…相手の世界観にしたがうか、それを覆すことによって注目させる。
3)破壊トリガー…人々の期待をあえて裏切り、注目するものを変えさせる。
4)報酬トリガー…内外からの報酬で人々のモチベーションを向上させる。
5)評判トリガー…専門家、権威者、大衆の評価を用いて信頼性を高め、相手を魅了する。
6)ミステリー・トリガー…謎や不確実性やサスペンスを創りだして、最後まで関心をつなぎ止める。
7)承認トリガー…自分を承認し、理解してくれる人には注目するものだ。そうして深い結び付きを育てる。

 

ここまで読むと、ふと気がつくわけですよ。

この分厚い本の冒頭部分だけで、7つのトリガーがキレイに利用されているということを。

 

自動トリガー

自動トリガーとは「色やシンボルや音などの感覚的刺激を与え、無意識的な反応を引き起こして注目させること」。ポイントとしては、色やシンボルや音などの感覚的刺激を与え、無意識的な反応を引き起こして注目させる、ことなのですわ。

こいつやばい!とか、思った瞬間に一気に引き寄せられることが「自動トリガー」だという。

頭のなかで、いろいろ考えさせてはダメだと。脊椎で、一気に反射的に注目を集めなきゃダメだということね。

とはいえ、やり過ぎちゃダメだと。

では、どうすれば明確な方法で注目を集める&捉えることができるのかというと

自動トリガーは、注目を明確な二つの方法でとらえる。一つは「対比」。ふたつ目の方法は「連想」だ。

 

だとな。

堆肥と連想を駆使して、まずは反射的な注目を集めましょう、と。

 

フレーミング・トリガー

フレーミング・トリガーとは「相手の世界観にしたがうか、それを覆すことによって注目させる」ことなのですわな。ポイントとしては「相手の判断基準を知る」ことなんですと。

それは具体的にどういうことかというと

 

送りたいメッセージを相手が受け入れやすくなるように、アイディアの見せ方を変えるというものだ。

 

であると。

考え方のフレームワークを情報を受け取る人間に対して投げかけ、情報の受け取り方、考え方、切り出し方を変えてしまう。

いわば、議題設定を変えてしまう方法を意味しているのだ。

なので

 

フレーミング・トリガーはほかのトリガーとはちがう。というのも、残りのすべてのトリガーのための舞台を作るからだ。フレーミング・トリガーはわれわれの短期の注目(短期の集中)にも、長期の注目(長期の関心)にも大きな影響を与える。
だから、注目を得るための戦略を選ぶまえに、まず時間を掛けて相手の判断基準を理解する必要がある。

 

なんですとな。

 

破壊トリガー

破壊トリガーとは「人々の期待をあえて裏切り、注目するものを変えさせる」こと。フレーミング・トリガーで期待させておいて、あえて裏切るのが破壊トリガーなのですよね。
きっと。

でも、この破壊トリガーは使い方が難しい。

まずは、タイミングが重要。どれくらい重要かというと、最初の15秒に「これから何が起きて、どうなる???かもしれない」という期待を抱かせないといけない。

なんでか?なんで、15秒なのか?それにはちゃんと理由がある。126ページにしっかりその理由が書かれている。

人の注意を惹くための持ち時間は15秒か、それ以下だ。
「最初の15秒がもっとも重要なんです」。Googleのユーチューブ部門のストラテジスト兼リサーチャーのレイチェル・ライトフィットは、ユーチューブ本部のだたっ広いオフィスでそう語った。
統計によると、ユーチューバーは15秒以内に、視聴者にもっとも見たいと思わせなければならない。
ユーチューバーが誤りがちなのは、その動画を見るべき理由を冒頭で示さないことだ。

 

なのだ。
ユーチューバーでなくても、コレは守ったほうが良い。そして、その15秒には多くの情報をつめ込まないほうが良い。詰め込んでしまうと著者が「複雑性の落とし穴」という現象に陥ってしまう。

たくさん情報を伝えればつがえるほど司会してもらえるとおもいきや、そうでなくなってしまうという、「複雑性の落とし穴」に。

 

報酬トリガー

報酬トリガーとは「内外からの報酬で人々のモチベーションを向上させる」こと。ポイントとしては、相手のモチベーションを知ることです。まぁ、いわゆる「人参」のことなのですが、これが単純ではないと。

どう単純じゃないかというと、141ページに書かれているのですが

われわれが求める報酬には、外的と内的の二種類がある。「外的報酬」は何かを達成した時に受け取る、形のある報酬だ。お金とか食べ物とか、トロフィーや、テストで満点をとることなどがこれにあたる。対するに「内的報酬」は、心で感じる満足や達成感など、形のない報酬を指す。コンサートのソロパートで人々を釘付けにしたり、偉大な小説を読み終えた時に感じる満足や喜びだ。同様に、報酬にたどり着きたいと思うモチベーションにも、外的なものと内的なものがある。

 

なんですって。
ただ、人参をぶら下げるだけではダメ。ちゃんと内面と外面を考えて飴と鞭の飴を用意しなきゃならないと。

外的報酬ばかりに目を向けていると、あまりいいことないと。じゃあ、満足感を得るためには&与えるためにはどうすればいいのか????ということは163ページに書かれている。

 

シザーズ・エンターテイメントでは、この変化を生き抜くだけでなく、さらに成長を遂げる役目をCMOのタリク・ショーカットにまかせた。「われわれは、説得できる顧客を見きわめて重点的に取り組むべきだと強く思ってます」とショーカットは言う。彼の言う「説得できる顧客」とは、ある時に市場にいるが、たんに見回しているだけの人を指す。繁華街にいてイタリア料理が食べたい気分だとする。だがどのレストランを選べばいいかわからない。「そう考えているときこそが、説得できるときなんです」とショーカットは言う。「人がそんな気分になったときに、目の前に居合わせるよう努力しています」

 

そりゃ、まぁ、そうでしょうと。バッターが「ここにボールを投げて欲しい」と思っているコースにボールを投げれば、そりゃ、ホームランを打ってくれるでしょう。

でも、それをどうやってしるのか?

その方法も164ページに記されている。

 

シーザーズはどうやってタイミングよく顧客の前に現れるのか。まず「目につくこと」に注力するとショートカットは言う。広告やグーグル検索や雑誌、独自の刊行物を活用して、シーザーズや、系列のホテルとカジノで好きなモノを顧客に思い出してもらうのだ。
(中略)
二番目の方法は、顧客がもっとも欲しがりそうな時を見きわめて報酬を提供することだ。

 

評判トリガー、ミステリー・トリガー、承認トリガーは「だよね~」ということがメインで記されているのですが、たぶん「評判トリガー」以降が、世の中で一般的に言われるプロモーションの世界なんじゃないかしら?と思ってみたりもする。

 

じゃあ、読まなくてよいか?というとそうではない。

 

キッチリカッチリと情報を伝える方法が、本書を一冊読むとよく分かるようになっている。

 

 

アテンション―「注目」で人を動かす7つの新戦略

アテンション―「注目」で人を動かす7つの新戦略

 

タイトル:アテンション
著者:ベン・パー
訳者: 依田 卓巳、依田 光江、茂木 靖枝
日本語版解説:小林弘人
発売元:飛鳥新社
おすすめ度:☆☆☆☆☆(良書だ!)