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統計学が最強の学問である[ビジネス編]

著者:西内啓
発行元:ダイヤモンド社

 

目次

 

序章 「センス」と「事例」で分析をするな

01 日本人が知らない「リサーチデザイン」というスキル
データ活用のよくある失敗例/個人のセンスに頼らないリサーチデザイン/
「枝葉」よりも「幹」の改善を

02 本書の構成と枠組み
本書が対象とする4つのテーマ/本書での説明の手順とキーワード

第1章 経営戦略のための統計学

03 データで戦略を導け
コンサルタントマトリックスがお好き/マトリックス分析の2つの限界

04 経営戦略の理論的背景① ポーターのSCP理論
経営戦略を代表する理論/シンプルで美しいファイブフォース分析/
ポーターへの反証となった日本企業の躍進

05 経営戦略の理論的背景② 経営戦略論の相性問題
企業内の強みに注目したジェイ・バーニー/ポーターとバーニーはどちらが正しいのか?/
経営戦略の統計分析の歴史

06 経営戦略のための分析手順① 分析対象の設定
統計学的な戦略策定のアプローチ/水平方向への市場分析/垂直方向への市場分析/
非連続的な市場分析

07 経営戦略のための分析手順② 分析すべき変数のアイディア出し
ビジネスマンのためのシステマティックレビュー入門

08 経営戦略のための分析手順③ 必要なデータの収集
まずは公開された客観的なデータから/「儲かっている度合い」に総資本利益率を使う理由/
非上場企業も分析の対象に/調査会社への上手なオーダー法/
主観的な要素が入ったデータを集める際の注意点/集めたデータのまとめ方

09 経営戦略のための分析手順④ 分析とその解釈
単純集計の2つの限界/ステップワイズ法と人の目による変数選択/
分析の解釈の実例と基礎知識/詳細な分析手法と、それをおすすめしない理由/
厳密な検証よりも、素早い小規模なアクションを

10 本章のまとめ
統計学的な補足コラム1 分散成分分析または混合効果モデルについて

第2章 人事のための統計学

11 優秀な人は採れてますか?
「戦略よりも人材」という真実/科学的なエビデンスに基づくGoogleの採用プロセス/
ただの「面接」はあまり役に立たない

12 一般知能と状況適合理論
「勉強ができれば仕事もできる」は3割正しい/
リーダーシップの研究者たちが発見した状況適合理論/
メタアナリシスで見る「仕事は相性次第」/「高学歴でハキハキ」ばかりではもったいない

13 人事のための分析手順① 分析対象の設定
数十人いたら分析ができる/解析単位の広げ方、分割の仕方

14 人事のための分析手順② 変数のアイディア出し
人事のアウトカムの設定は難しい/「ランダム性を取り入れる」という工夫/
説明変数は広くアイディアを収集する

15 人事のための分析手順③ 必要なデータの収集
社内に埋もれたデータを見つけ出す/アウトカムの設定の注意点:データ不足をうまく補う/
説明変数に関わるデータの拡充:性格特性の測り方

16 人事のための分析手順④ 得られたデータの分析
相関の強い説明変数は「縮約」する/相関する2項目の得点は合算してもいい/
いくつもの項目が相関する場合は「因子分析」を/あとは重回帰分析かロジスティック回帰を

17 人事のための分析手順⑤ 分析結果の解釈
ロジスティック回帰の見方の復習/「経験や直感に反する結果」はないか?/
取るべきアクション:「変える」/取るべきアクション:「ずらす」/
人的資源管理の施策の候補となる「HPWP」

18 本章のまとめ
統計学的な補足コラム2 「打ち切り」と「切断」

第3章 マーケティングのための統計学

19 マーケティング戦略と顧客中心主義
iPhoneのニーズは本当にリサーチでわからなかったのか?/
ブルー・オーシャン戦略に倣ったアプローチ/統計学が天才に打ち勝つ理由

20 現代マーケティングの基礎知識
コトラーによるマーケティングの定義とよくある誤解/誰を相手にビジネスを営むのか/
何をどう売るのか

21 マーケティングのための分析手順① 「誰に売るか」考えるためのデータの準備
マーケティングのデータ分析は最低3周回す/分析対象は、「よっぽどあり得ない」以外の全て/
まずはシングルソースデータの分析を

22 マーケティングのための分析手順② 「誰に売るか」考えるための分析
重回帰分析とロジスティック回帰を使わない理由/おすすめは「クラスター分析」/
良いセグメントの発見がクラスター分析の目的

23 マーケティングのための分析手順③ 「何を売るか」考えるためのデータの準備
ポジショニング=何を売るか/良いポジショニングは質的調査と量的調査の組合せで/
マーケティングの力を実証した「truthキャンペーン」

24 マーケティングのための分析手順④ 統合行動理論を用いた質的調査
多くの学問の成果をカバーする統合行動理論/質問と調査票の具体的な作り方

25 マーケティングのための分析手順⑤ 「何を売るか」考えるためのデータ分析と解釈
分析からわかること/今度は重回帰分析やロジスティック回帰で/
ポジショニングを考える2つの方法

26 マーケティングのための分析手順⑥ 「4つのP」を考えるための分析
セグメントの対象者を理解する/試作品やチラシによるテストマーケティング

27 本章のまとめ
統計学的な補足コラム3 決定樹分析とランダムフォレスト

第4章 オペレーションのための統計学

28 デミングがもたらした新しい「マネジメント」
サウスウエスト航空の成功を支えたオペレーションの改善/
kaizenを生み、ビル・クリントンを支えた統計学者/
「バラツキの背後で影響する原因」に対処せよ

29 部分最適から全体最適
社内に眠る、広大な改善のフロンティア/「ボトルネック」から始めよう

30 バリューチェーンと部署ごとの定石
バリューチェーンの考え方/具体的なアウトカムと解析単位

31 業務のためのデータから分析のためのデータへ
まずは今あるデータの分析から/データを分析可能な形にする/データを紐付ける

32 データの品質向上と加工のポイント
「完全なデータ」という罠/「窮屈さ」を感じたらしめたもの/ムリに「仮説」を考えない

33 「洞察のための分析」と「予測のための分析」
「予測のための分析」とは/「洞察のための分析」では、あなたの暗黙知が武器になる/
「予測のための分析」が難しい2つの理由/失敗していたGoogleのインフルエンザ患者の予測

34 自己回帰モデルとクロスバリデーション
自己回帰モデルの概要/過学習に注意する/クロスバリデーションで検証する

35 本章のまとめ
統計学的な補足コラム4 集合知を使った予測手法

 

 

個人の感想

 

相変わらず面白い本ですよね。
そして、データ分析の分野で仕事をしているわたしにしては、「あるあるネタ」の宝庫だったりするわけですよ。
そりゃ、すぐに他社の成功事例を真似たり、データ分析なのに、個人のセンスに任せきって分析を行っちゃったりするわけですよ。
もう、超ナンセンス。
そういうところをズバズバ指摘してくれるので、この本書は気持ちいい。

 

そして、全作品と同じく、この本も「使える」ところに偏っているのが素晴らしい。
ビジネスと言っても、それを「経営戦略」「マーケティング」「人的資源管理」「オペレーション」にしぼっていて、さらにアウトカム(目的変数)を定量的な数字の大小を表す場合は重回帰分析、「ある状態を取るか否か」という定性的なものの場合はロジスティック回帰分析という2つにの手法に分析手法を絞って、説明しているのも良い(まぁ、ちょいちょい他の手法も出てくるけどね)。

 

そして、ビジネスには「まず、マーケティング的な分析」ということで、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)や、「ファイブフォース分析」「リソース・ベスド・ビュー(RBV)」の説明をしているのも良い。
こういうことわからないと、そもそも何もできないものね。
そして、これら分析手法がすべてでははないので、ちゃんと反証を載せているのも素敵。

 

で、この本のなかですげー良かったのが自社の事情に合わせて、経営学者の先行研究をカスタマイズするって考え方ですわ。世の中の天才、先人の知恵を借りましょうね、と。

 

で、それの具体的なステップが

①競争する市場の範囲と分析対象企業の設定
②分析すべき変数のアイディア出し
③必要なデータの収集
④分析および結果の解釈

 


と明示されているところですな。

 

ちなみに②の分析すべき変数のアイディア出しは、Googleで論文を検索して当たれ、と。論文検索、Google以外にもあるけれど、まずはGoogleだと。Google Scholarで検索ってはなしですな。

そして、きっちり分析する時は、ステップワイズ方を使えとな。

で、ステップワイズ法とは

 

重回帰分析や判別分析の場合,独立変数が多いと実地への適用が面倒になる。独立変数の候補から,予測や判別に有用な順に独立変数を採用するための方法である。まず,最も有用な独立変数を 1 個採用する。次の段階では,まだ採用されていない独立変数のうちで最も有用な独立変数を 1 個採用する。なお,最初のほうで採用された独立変数も,後で採用された変数との関係で不要になる場合があるので,新たな独立変数の採用の前に,すでに採用された変数を取除くかどうかをチェックする。独立変数の採用と除去は偏 F 値による検定で決定される。偏 F 値がある基準値(Fin)より大きければ採用,別の基準(Fout)より小さければ除去される。また,偏 F 値から求められる有意確率 Pin,Pout によっても同様に変数選択を行うことができる。変数選択の過程で,偏 F 値の自由度が変化するので Pin,Pout により変数選択を行うこともある。
詳しくは,重回帰分析を参照のこと。

 

そして、ステップワイズ法に関しては、このブログ(?)がわかりやすい。

datachemeng.com

そして、この本は参考文献が充実していて良い。
そして、英語ばっかりだったりするのがすごい。

 

 

統計学が最強の学問である[ビジネス編]――データを利益に変える知恵とデザイン
 

 

タイトル:統計学が最強の学問である[ビジネス編]
著者:西内啓
発行元:ダイヤモンド社
おすすめ度:☆☆☆☆☆(名著だ)